はじめに
国内・海外で年々注目が加速している金継ぎ。
金継ぎとは、割れたり、欠けたり、ヒビが入った器を、漆(うるし)と呼ばれる漆の木の樹液を加工した塗料を用いて修復し、最後に金などのお粉でかわいらしく仕上げる日本の伝統技法です。モノがまだそれほど多くはなかった時代には、壊れたモノを修復してもう一度使うことは当たり前でした。大量生産・大量消費の今も受け継がれるべき、日本の素晴らしい文化です。
この金継ぎを職業にされている日本中の職人さん(「金継ぎスト」と呼んでいます)にインタビューをしました。金継ぎを始めたきっかけや、その想いを伺う中、それぞれの金継ぎストの人生に触れることができ、金継ぎにもっと興味を持つことができました!
ミッション
金継ぎを、金継ぎストからの目線で語っていただき、世の中に広く知ってもらう!
今回の金継ぎスト:あとりえ青輝鳥 加藤 恵さん
宮城県仙台市で伝統的な金継ぎを行っている加藤 恵さんが、快くインタビューをお引き受けくださいました。加藤さんのお話から学んだことを、私見を織り交ぜながらまとめさせていただきました。
あとりえ青輝鳥(せいきちょう)ホームページより https://www.seikicho.com/
金継ぎインタビュー
漆芸・金継ぎの世界に足を踏み入れたきっかけ
山形県酒田市にお生まれで、ご結婚されてご主人について和歌山県に移住された加藤さん。和歌山県は紀州漆器の産地(日本三大産地の一つ)でいろいろな職人さんがいらっしゃり、お友達からお声がかかったことがきっかけで、伝統工芸士の久世清吾氏(沈金)・谷岡敏史氏(塗り)・谷岡久美子氏(蒔絵)に師事されたそうです。また和歌山県では伝統技法の後継者育成プログラムがあり、彫漆(ちょうしつ)・紀州彫り・金継ぎ等の研修も受講され、その後仙台市に移り、「うるしのあとりえ青輝鳥」として作家活動を開始されたそうです。現在、漆のアクセサリー作家をメインとして、金継ぎ教室をはじめとするワークショップも開催されています。
金継ぎ活動
漆のアクセサリーのワークショップを行っている中で、生徒さんより金継ぎの要望があり金継ぎ教室を始められたそう。今では金継ぎを習う生徒さんの割合の方が多くなったのだとか。教室のほか、注文のお直しも受け付けていらっしゃいます 。加藤さんのご活動はLine公式、Facebook、インスタグラム、Twitter、ホームページなど、幅広く情報を発信されています。
仙台の金継ぎ事情
仙台では堤(つつみ)焼きが有名ですが、金継ぎをメインでされる職人の方は少なく、漆職人さんが本業の傍ら、頼まれたら金継ぎ修理をされるぐらいのように思います。金継ぎ修理を頼める方が少ないため、自分で習いたいという需要の増加につながっているのかもしれません。
金継ぎ教室のニーズ
30~60歳代の骨董品や器が好きな女性が多いように思います。基本的には仙台市内にお住いの方が多ですが、遠方だと福島県からもいらっしゃるとか。金継ぎへの需要は、特に東北大震災の以降増えているようです。
金継ぎ・漆の特徴
金継ぎでのお直しについて、漆は時間が経つとともに強度が上がっていくことを知らない方が多いので、金継ぎで修理した後、期間をおいてから使うようにと、持ち主に最初にアナウンスをされているそうです。時間がかかっても、お直しした後、「また使えるのがうれしい」といつも喜んでもらえるそうです。手間ひまがかかりますが、加藤さんは本漆を使った伝統的な技法のみで金継ぎを行っていらっしゃいます。現在、簡易金継ぎとよばれる、より早くできる最近の手法が流行っていて、ワークショップやHow-to本もたくさん出ています。それはそれで時代に合ったニーズがあり、金額も安く修理した器をすぐに使えるので、 本漆による金継ぎや、伝統工芸への入り口 としては良いと思います。しかし材料など、本漆を使った金継ぎとの違いをお客さまにもご理解いただきたいと思います。
漆を使う金継ぎは壊れた器を元に戻すだけではなく、実用に耐える強度を保ちつつ、次に壊れるときにまた同じところが壊れるように、つまり、これ以上の破損を増やさないように直す、という考え方なのです。一方、簡易金継ぎは強力な接着剤でくっつけるため、次に壊れるときは、前回と違う部分が壊れることが多いです。どちらを選ぶかはお客さま次第ですが、それぞれの手法の得手・不得手を知っていただければと思います。
インタビューの後に、加藤さんのカルチャーセンターでの金継ぎ教室の様子を拝見させていただきました。
最後に
漆について学び続け、多くの人にその魅力を伝えている加藤さん。生徒さんにも慕われ、みんなで楽しみながら金継ぎできるよう気配りされているのが伺えました。ワークショップに創作にお忙しそうですが、これからの益々のご活躍を応援しております!
(左)取材者Yuki (右)加藤さん
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